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プロローグ

Bound(ボンド):専門学校「ボンド」に通う少女たちの物語。

 


登場人物

・朝宮 涼(あさみや りょう)

  2年生。間抜けでお調子者だが、後輩の面倒見は意外と良い。少し腹黒い。

 

・木更津 睦(きさらづ むつみ)

  2年生。いつも笑顔でポジティブな性格。ムードメーカー。

 

・小鳥遊 樹(たかなし いつき)

  1年生。涼を慕う後輩。天真爛漫。

 

・湊 未殊(みなと みこと)

  1年生。中二病。マイペース。


日本唯一、「拘束」を学ぶ専門学校「ボンド」では、各種縛り、縄抜け、責め、拘束具などの知識や実践を中心に、魅力的な「もがき」や拘束の状況の考察などの学習が行われている。

運営資金は写真、ビデオ、拘束具、グッズ販売などで調達。

2020年06月26日

1.とある授業風景

「ちょっと、樹(いつき)!そこは、もぅちょっとキツくしないと少し動こうとしただけでホドけちゃうよ!」

今日のカリキュラムは麻縄を使った緊縛実習。
2年生の涼と1年生の樹ペアは、受け手の涼、縛り手の樹が基本の高手小手縛りの練習に励んでいた。
下級生の樹は慣れない手つきで麻縄を、縛られながらも上から目線の上級生、涼からダメ出しを受けていた。

「でも涼ねぇ、ぼくまだあんまりテンションの張り方がよくわかんないんだよ…」

「コラ!樹!授業中は『涼ねぇ』って呼んじゃダメだろ!?授業中は先輩!」

「は~い、センパイ。縛ってるのぼくなのに、涼ね…センパイ強過ぎ!」

「ふっふ~ん♪こんなユルユルな縛りじゃ、ボクの体も心も縛れませんよ~だ!!」

 

 

涼と樹はいとこで、歳が近いこともあって幼馴染的な仲の良さだった。

専門学校「ボンド」は、講師はいるものの先輩が講師役を務めることも少なくない。
また、受け手志望の者も縛り手志望の者も、お互いの気持ちや感覚を学ぶため、どちらの経験も積ませるのが教育方針。


本来受け手志望の樹は1年生ということもあり、特に縛り手の実習が苦手だった。


「未殊(みこと)ちゃん、あなたは少しキツ過ぎです!あと、縄の位置を神経からずらさないと受け手が麻痺をおこしますよ!そもそも緊縛とは、相手を傷つけずに身動きを封じるところに意味があってですね、相手を想いやる心が大切で、そもそも動けなくするだけなら…」

「睦(むつみ)先輩、少々の麻痺は受け手の華です。緊縛された証と誇りです。」

「ちょっと、そんな危険思想…、あっ、だから力任せに締め上げるのではなく…涼さ~ん、た~すけ~て~!」

もう一つのペア、睦と未殊ペアも多事多難の様相を呈していた。

 

 

2020年06月26日

2.ボクとぼく


学校帰り、涼と樹が学園の寮へと歩いている。

「樹、今日の夕飯何食べる?」

ソフトクリームを舐めながら涼が聞く。

「涼ねぇ、そんなに食べてばっかで、なんで太んないの?」

「さぁ、運動してるからかな?」

「でも涼ねぇ、高校生までやってた水泳部、この学校に入ってから辞めちゃったんじゃない?」

「う~ん、縛りから抜けようと毎日もがいてるからかなぁ?それとも実習中、いっぱいイッちゃうから!?」

「イクッて、涼ねぇ…(赤面)、この学校に入ってから、エッチくなったなぁ…」

「じゃ、あんたはなんでこの学校に入学したんですか?樹くん?」

「…だって、憧れの涼ねぇと一緒にベンキョーできるって思って、必死に親説得して県外のこの学校に来たんだよ!知ってるでしょ!」

「憧れ、ねぇ…」

 


不敵な笑みを浮かべつつ、アイスを食べ続ける涼。
涼は常日頃、幼いころから自分の後ろをまるで仔犬のように追いかけてくる純真無垢な樹のことを、妹と娘の中間のように愛しく感じていた。

また、天真爛漫な普段の樹からは想像できない、その隠された性癖も見抜いていた。

「もぅ…バカッ!」


立ち止まり、赤面した顔でうつむき悪態をつく樹。


しかし、意を決したように小走りで涼に追いつくと、涼が手に持っているアイスを横からかぶりついた。

 

 


「てんめぇ!樹!」

「やぁ~い!スキを見せた涼ねぇが悪いんだよ~だ!」

 


いとこ同士で住まいも近所だった涼と樹は、幼いころから二人とも活発で、姉妹というよりも兄弟のように過ごしていた。
水泳部で小麦色に日焼けした涼と、小さいころ涼に泣かされてばかりで強くなろうと空手を始めた樹。


体育会系の二人は、揃ってショートヘアーで、見た目は少年のようだった。
いつも外で元気よく一緒に遊んでいた二人は、兄弟と間違われることも多かった。


そのせいも関係するのか生来の気質かは定かではないが、涼はいつしか自分のことを「ボク」と言いだし、それをかっこいいと感じた樹も真似をして自分のことを「ぼく」と言うようになった。

2020年06月27日

3.電波娘

「カイザード、エルザード…」

「みっちゃん、何をブツブツ言ってるの?」

昼休み、樹が同じクラスの未殊に問いかけた。

「詠唱…」

「えいしょう?」

「そう、呪文の詠唱。ちょっと地獄の門を開いて煉獄の世界を覗いてみようかと思って…あ、でも気を付けて!こちらから覗くということは、あちらからもこちらのことを…」

「…そうなんだ!何を言っているのかサッパリだけど、とりあえず何か食べに学食行こっ!ぼく、お腹ペコペコ!」

「そうですね、あたしたちが生きる為には他の生命を奪い、煮て焼いて咀嚼&嚥下しなければなりませんものね。さぁ参りましょう、生命の宴へ!」

「うん!少し食欲が失せたけど、とりあえず学食へレッツ・ゴーだ!」

 



未殊には友達が少ない。
と、いうよりも樹以外友達がいない。
裏表のない性格で友人も多い樹が、何故この電波娘(未殊)を避けないどころか積極的に接触を持つのか、クラスメートの誰にも分からない。

だが、樹は他の子から避けれられる未殊と一緒にいるのが苦痛とは思わないし、ともすると言動が暴走しがちな自分のブレーキ役に未殊がなってくれている様な気がしていた。
また、感情を表に出し過ぎる自分に対して、何を考えているか分からないが不機嫌な様子を一度としても他人に見せたことがない未殊を、樹は少し尊敬していた。

「みっちゃん、今日は何食べる?ぼく、カツカレーにしようと思ってるんだけど!?」

「いっちゃんは、カレーが好きだね。昨日は唐揚げカレー食べてたよね?」

「ふっふっふ!カレーというより、らっきょうが好きなんだ!で、らっきょうに一番合うのがカレーなんだ!」

「そりゃ、盲点を突かれた!突かれたのが秘孔だったら『たわば!』って言って死んでたわ!」

「相変わらず、みっちゃんの言うことはイミフだなぁ…」

「そうですか。北斗の拳ネタは、もう若者には通じませんのね。では、ドッジ弾平バージョンで…」

「少し聞いてみたい気もするけど、それはともかく何食べるか決めてよ!そして生命の宴だったっけ?始めようよ!お腹ペコペコだよ!」

「…カツカレー。らっきょう抜きで。」

「ぼくに合わせるとは、愛い奴(ういやつ)め!でも、らっきょうは抜かないで注文して、らっきょうぼくにちょうだい!」

「…3回まわって、ワンは?」

元気よく3回まわって『ワン』と鳴いた樹はらっきょう2人分を見事手に入れ、鼻の穴が拡がる程興奮して喜びの表情をみせた。

2020年06月28日

4.お返し

帰り道。

「ねぇ、部長!今月の部費って余ってる?」

「涼さん、余った部費を何に使われる気ですか?そして、お金を無心するときだけ部長呼ばわりはやめて下さい!」

 


「リンスを買いたいんだ!」

「ずいぶん、私的な利用なんですね…。でもリンスって、今時100円ショップにもあるんじゃ?」

「シャンプーも疾の昔(とうのむかし)に切れてるんだけど、それは体を洗う固形石鹸で代用してる。でも、リンスしないと、髪がギシギシになっちゃうんだよぉ!縛られた時に縄がギシギシ鳴る音は好きだけど、髪がギシギシなのは嫌なんだ!」

 



「今時の若い娘がボディーソープではないというのも驚きですが、髪を固形石鹸で洗うって!?」

「うち、ビンボーなんだ。」

「でも、涼さん帰り道にいつも買い食いしてるじゃないですか!?」

「それがたたって、お金なくなっちゃったんだ!ボクのエンゲル係数は高いんだ!」

「そんな自業自得にみんなの部費を使うわけにはいきません!いとこの樹さんに借りるという手は?」

「樹には借金しまくってて、アイツも今やボクと同じくスカンピンさ!」

 



「さっきから涼さんの生活状況に驚きの連続です!樹ちゃんもお気の毒に…。分かりました、私が涼さんにリンスを買ってあげます!」

「ありがと~!むっちゃん!」

「その代わり…お返しはいつものですよ?」

「は…、はい…。ついでに今日の帰り道のお菓子も…いい?」

「いいですよ!お返しも2倍になりますけど、いいですね?」

「少し恥ずいけど…お菓子には代えられない、その条件飲もう!むっちゃんちは、お金持ちでいいなぁ!」

「私の家も、特別裕福というわけではないのですが…ねっ!」

 



睦の言うお返しとは、ボンドの実習とは別に行われる、睦による私的な拘束&快楽実験だった。
それを密かに撮影・販売したものが、睦や涼達が所属する拘束倶楽部の潤沢な資金源であることを、まだ涼は知らない。

ちなみに販売した利益は全額部費へあてており、睦が私的な利益にすることはない。
睦が手にするのは、拘束の実践技術と快楽であった。

睦:心の声「(これで古くなっていた麻縄を新調できる!奈〇あきらさんの縄にしちゃおっかな♪)」

 



「現金の貸し借りはしませんが、現物支給でしたら相談に乗りますよ!ついでに、今回はおまけでシャンプーも付けましょう!」

「ありがとう!むっちゃんは優しいなぁ!」」

睦:心の声「(そんなに無邪気に喜ばれると、少し良心が咎めますが…そうだ!ボタニカルでノンシリコンのシャンプーとリンスを買ってあげよう!)」

少し高めのシャンプーとリンスを買い与えることで、良心の呵責を薄める睦だった。

 

 


「でも、お返し2倍かぁ…そうだ!樹と2人でやれば2倍返済になるな!むっちゃん、それでいい?」

「いいですよ!樹ちゃんも一緒に可愛がってあげちゃいます!」

 



恐らく涼に貸した金は返済されない上に、知らないうちに睦への返済に協力が決まっている樹。

樹の境遇に涙を禁じ得ない。

2020年06月30日

5.囚われ倶楽部

日本唯一の拘束専門学校「ボンド」、拘束実習のみでは満足できない4人組が行っている部活動が「囚われ倶楽部」。

部長の2年生『木更津 睦(きさらづ むつみ)』、同じく2年生の『朝宮 涼(あさみや りょう)』、1年生の『小鳥遊 樹(たかなし いつき)』、同1年生『湊 未殊』が部員である。

メンバーの概略は以下の通りだ。

・朝宮 涼
  2年生。成績は中の下だが身体能力は学園一。意外と後輩の面倒見が良い。

・木更津 睦
  2年生。部長。頭脳明晰、運動神経抜群、眉目秀麗の三拍子そろった才女。

・小鳥遊 樹
  1年生。いとこの涼を慕う。竹を割ったような性格。空手道場に通っているが弱い。

・湊 未殊
  1年生。中二病。マイペース。懐古厨。動揺すると言葉使いが乱れる。

2年生である涼と樹が立ち上げた倶楽部で、樹は涼のいとこ、未殊は樹の友人ということでメンバー入り。

メンバー募集は基本的にしていないが、学園内人気ナンバー1・2を競う睦と涼が所属し、その他の部員も美少女揃いということもあり入部希望者は多い。

活動時間は放課後で、活動内容は様々な拘束の実習となっているが、実際は部員4人でしゃべっているだけのことことが多い。

揉め事が起こった際は、拘束する側とされる側に分かれての対戦で決着をつけるのが決めごと。

拘束からの脱出の可否や、バイブなどの快楽に耐えれるか、拘束の美しさや魅力的な「もがき」などで判定。

筋トレや各種スポーツも行われるなど体育会系的な所も見られ、部員のスタイル維持の一助も兼ねている。

課外活動として、近所のラーメン屋、お好み焼き屋など、俗にいうB級グルメ店やスイーツの美味しい店などの開拓なども行われているようだ。

最近の部員たちのブームは、ファミレスのドリンクバーの飲み物調合や頼んだメニューを混ぜたりして新しくて美味しいメニューを開発することらしい。

2020年07月06日

6.回想 ~樹と未殊の入部~

「みっちゃん、ぼくのいとこのねぇちゃんが入ってる倶楽部に、一緒に入部しようよ!」

「わたくしめでございますか?私は授業が終わったら、大事な目的がございますので、断固拒否させていただく所存でございます。」


「え~、つれないなぁ。そんなに大事な用事があるの?」

「ええ、夕焼けニャンニャンとレッツゴーヤングを見なければなりませんの。」

 



「…それ、まだ日本の経済バブルが膨らみ始めたくらいの時代の番組じゃない?」

「ええ、録画してあるTVショーをリアルタイムの時間に見るのが、わたくしめの唯一と言って良い生き甲斐ですの。」

「録画ならいつでもいいじゃん!涼ねぇから奇数だと拘束する側とされる側の組ができないから、入部したいならあと一人連れて来いっていわれてるんだよぉ~!みっちゃんが必要なんだよぉ!」

「奇数は神様の数字でありんすからね。柏手も2回打つのは人間の数字だからでありんす…って、わっちである必然性はないでありんしょう?他を当たっておくんなまし!」

 


「言葉遣いがメチャメチャになってるよ!…動揺してるな!?心揺らいじゃってるな!?」

「そ、そんなことはござりんせん!ちょっと花魁の魂が乗り移ってきただけで…」

「にひひ!拘束、緊縛、いっぱいできるのになぁ~!普段は部員募集してない倶楽部なんだけどなぁ~!入りたいって人、いっぱいいるらしいんだけどなぁ~!でも、ぼくはみっちゃんと入りたいんだよ!」

「…拘束という言葉にはなにか魔力が宿っている気がしてなりません。このわたくしめともあろうものが…」

いつも感情が読めない未殊も、なんのことはない拘束好きであると樹は悟った。


が、「ぼくはみっちゃんと入りたいんだよ!」という言葉が最後のドドメとなったことには、言った樹、言われた未殊、ともに気付いていなかった。

計算できない樹、友情に気付けない未殊、それぞれ頭脳的、情感的、実に残念な2人だが、それが2人の仲の良い理由なのかもしれない。


しおらしくうつむき、小さくコクリと首を縦に振る未殊を見て、樹は元気よく言った。


「それじゃあ、行こうじゃないか!『囚われ倶楽部』へ!囚えに!囚われに!」

「…いっちゃんの勢いは天下一品ですね…私はどこの誰だか知らない人たちに、何をされるか分からないのに、意気揚々と向かおうとするいっちゃんが不思議生物に見えます。」

こうして樹と未殊の二人は囚われ倶楽部の門を叩いたのであった。

2020年07月06日

7.睦vs涼 …と樹



 

(鹿児島弁)「ばけすんなよ!」

(熊本弁)「ぬすくんなよ!」

 


「ど、ど、ど、どうしたの!? 2人とも!」

「言葉の意味は分かりませんが2人の態度から、いや、精霊のお告げによりますと、どうやらケンカをしているようですね。」


ちなみに「ばけすんな」は「バカにするな!」「ぬすくんな」は「調子にのるなよ!」的な意味だ。

両方とも汚い言葉使いで、熊本でも鹿児島でも通常、女子は使わない。

2年生同士、ガチのケンカのようだ。

こういう場合、大変なのはどちらかというと周りの人物である。

 


「あわわわ…どうしよう、みっちゃん?」

「いっちゃん、あなたが習っている空手はこういう時の為にあるのでは?さぁ、カラティー・チョップの出番です!」

「ぼくが2人に敵うわけないでしょ!ぼく、万年白帯なんだから!」

「いっちゃんの空手は、畳水練なのですね…本当に残念です。」

ちなみに畳水練とは「畳の上で水泳の練習をする」という意味合いで、要するに役立たずということだ。

「…そこまで言われたら…ぼくだって、やるときはやるんだ~!!」

勢いよく2人のケンカへ割って入る樹。

「いっちゃん、グルグルパンチは武道をかじった人はやってはいけない必殺技では…?」

 


「あれ?いつきさん、何をされてるんですか?」

「いつき、こんなところで転がってちゃ邪魔!」

「何がどうなると、こうなるのでしょう?さすが、いっちゃんです。」

 


睦と涼の仲裁に飛び込んだ樹だったが、何故か緊縛状態で床に転がされていた。

「2人とも、ケンカは良くないです…。あと、言葉分かんないです…。」

己の力不足を まざまざと見せつけられた樹だったが、結果的にケンカを収めることに成功した樹の心は、哀しさの中に満足感もあった。

が…


「いっちゃん…ダッサ!」

未殊のトドメに樹は涙した。
しかし両手が使えない樹は、頬伝う涙を拭う術を持たなかった。

2020年07月13日

8.麻雀


睦:「ツモ!メン・タン・ピン・サンショク・イーペーコー、6千オール!」

涼:「あンた、背中が煤けてるぜ」

樹:「ヅガーン!」

未殊:「…ククク…」

 


拘束倶楽部恒例の月一麻雀大会である。

掛けの対象はもちろん拘束がらみである。

敗者は勝者の要求を断れない。

約1名ずば抜けた弱者がいるので、1年生組vs2年生組、ショートヘア組vsロング・セミロング組など、対抗戦も行われているようだ。

各雀士の能力値は以下の通り。

木更津 睦
通称 :ボンドの雀鬼
運  :★★★★★★★☆☆☆(7)
腕  :★★★★★★★★★★(10)
裏技 :★★★★★★★★☆☆(8)
総合力:★★★★★★★★☆☆(8)

朝宮 涼
通称 :哭きの涼
運  :★★★★★★★★★★(10)
腕  :★★★★★☆☆☆☆☆(5)
裏技 :★★★★★★☆☆☆☆(6)
総合力:★★★★★★★☆☆☆(7)

小鳥遊 樹
通称 :卓上のオツマミ
運  :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
腕  :★★★★☆☆☆☆☆☆(4)
裏技 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
総合力:★★☆☆☆☆☆☆☆☆(2)

湊 未殊
通称 :ミコト~悪魔の闘牌~
運  :★★★★★★★★★☆(9)
腕  :★★★★★★★★★☆(9)
裏技 :★★★★★★★★★★(10)
総合力:★★★★★★★★★☆(9)



「涼さん、また裸単騎ですか!?防御のことも考えて下さい!」

「ふっ…哭けば哭くほど、牌が光りやがる…」

「あらあら、こんなことが?天和(テンホー)・九蓮宝燈(チュウレンポウトウ)。」

「あれ?ぼくの手牌、15枚もあるよ?」

今回は1年生vs2年生の対抗戦だった模様。

…結果。

 


「いっちゃん、私の強運とあなたの弱運、あなたの勝ちのようです。」

「ごめんよ、みっちゃん…」

「あと3回くらい天和が必要でした…」

今月の勝者は、2年生コンビ。

2020年07月24日

9.格闘能力

今を遡ること数ヶ月前のとある日、湊 未殊はピンチだった。

専門学校ボンドへ入学のため、都会から引っ越してきた未殊は近所の下見をしていた。

「近所の寺社仏閣はひと通りチェックできました。あとは夏になったら『くねくね』が出そうな田んぼでも探索しましょうかね。」

 


そして、ガラの悪い男性達に絡まれた。

「やめて下さい。お金は持ってませんよ。」

男達の目的はお金ではなく未殊自身であったので、男達は関係ないとばかりに未殊を取り囲み今にも襲い掛かりそうだった。

 


「おまえら、『悪』決定!」

その叫びと共に、男達と未殊の間に飛び込んできたのは小柄な少女(少年?)だった。

小鳥遊 樹である。

 


「いたいけな少女を取り囲んで、何のつもりだい?ぼくがその子の代わりに、ちょっと遊んであげようか?」

身長が150cmにも届かないその少女は、言い終わるのが先か3人の男達に攻撃を仕掛けた。

少女の速攻に男達が機先を削がれたこともあるが、小柄な少女はなにか武道の心得があるのか、見事な体裁きで相手の攻撃を避け、突きや華麗な蹴り技を繰り出していた。

しかし多勢に無勢で途中羽交い絞めにされたり突き飛ばされたりしたものの、少女は何とか男3人を追い払うことに成功した。

 


「いてて…、キミ、大丈夫だった?」

「あなたの方こそ大丈夫ですか?結構、殴られてたみたいでしたけど…」

「平気!ちっちゃい時からいとこのねぇちゃんと取っ組み合いばっかりやってて、道場でも殴られたり蹴られたりばっかだからさ!」

「女の子相手でも殴るなんて、なんて人たちでしょうね!申し遅れましたが、ありがとうございます。おかげさまで助かりました。」

「いやいや。その制服、ボンドの制服でしょ?ぼくも今年からボンドに入学するんだ!」

「まぁ、同級生でしたのね!これからも、よろしくお願いします。」

「こちらこそよろしく!ぼく、樹!小鳥遊 樹!」

「湊 未殊です。よろしくお願いします。」

そう言ってその日分かれた2人は、後日ボンドへ入学して再会することとなった。

 


 


「いっちゃん、そういえばそんなことがありましたね。」

「そうだった、そうだった!なんだか懐かしいなぁ。」

「最初はいっちゃんのこと、小柄な少年かと思いました。」

「私服だったしね!」

「あらためまして、あの時は本当にありがとうございました。」

「あらたまれると、照れるなぁ…」

 


「でもよく考えたら、複数の男性相手に勝てるなんて、いっちゃんは結構お強いと思うのですが…」

「あれは相手が全員シロートで、ローキックの受けすら出来なかったんだよ。だから何とかなっただけだよ。」

「いくら相手が素人でも、自分よりはるかに身長も体重もある男性が3人もいたんですよ?涼さんはいっちゃんを弱い弱い言ってますけど…」

「涼ねぇは生まれつきケンカの天才だからね。田舎では男の子相手にケンカばっかやってて、ケンカ10段を自称してたよ。」

「ケンカ10段…昭和の残り香がする通り名ですね。」


「ちなみにストリートファイターの連中は、涼ねぇのこと『狂猫』って呼んでたよ。チビですばしっこくて、猫みたいだって…」

「あんた、また余計なこと言ってるんでしょ!」

 


「ヒャッ!涼ねぇ!!」

「涼さん、いっちゃんはホントに弱いんですか?」

「う~ん、ボクから見ればトーシロに毛が生えた程度かな。分かりやすく例えて言うと、後ろ手に縛られた上にアソコにバイブ突っ込まれて感じまくってる状態のボクと戦って、いい勝負できるくらい?」


「分かりにくい上に、すごい下品な例えですね…」


「涼ねぇは色んな相手とケンカの経験があるから、格闘技の知識も結構あるんだよね。勉強の成績は底辺だったけど…」

「あんたも人のこと言えるほど、成績良くないでしょ!言われてみればケンカの相手が使った技は、だいたいマネできるかな?」

「涼さん、聖闘士(セイント)みたいですね。ちなみに睦部長も、いっちゃんより強そうですけど?」

「むつみ部長は古武道をやってるよ!しかも実戦的だから、一つ一つの技が本気でやったらケガじゃ済まないものばっか。」

「無空波とか蛇破山とかですか…?」

「ボクもむっちゃんとは、本気でケンカしたことないなぁ。」

「話は聞きましたぁ!そこで、分かりやすく皆さんの戦闘力を表にしてみました!」


木更津 睦
通称   :48の殺人技
力    :★★★★★★★★★☆(9)
技    :★★★★★★★★★★(10)
スピード :★★★★★★★★★☆(9)
経験   :★★★★★★★★☆☆(8)
精神力  :★★★★★★★★★★(10)
総合力  :(46)

朝宮 涼
通称   :狂猫
力    :★★★★★★★☆☆☆(7)
技    :★★★★★★★★★☆(9)
スピード :★★★★★★★★★★(10)
経験   :★★★★★★★★★★(10)
精神力  :★★★★★★★★★☆(9)
総合力  :(45)

小鳥遊 樹
通称   :仔猫のいっちゃん
力    :★★★★★☆☆☆☆☆(5)
技    :★★★★★★★☆☆☆(7)
スピード :★★★★★★★★☆☆(8)
経験   :★★★★☆☆☆☆☆☆(4)
精神力  :★★★★★☆☆☆☆☆(5)
総合力  :(29)

湊 未殊
通称   :ズブの素人
力    :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
技    :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
スピード :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
経験   :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
精神力  :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
総合力  :(3)



「私の見立てでは、こんな感じです!」

「ま、数字で格闘能力出すとかナンセンスだけど、目安にはなるんじゃない?」

「素人の私を基準にすると、皆さんの強さがよく分かります。」

「う~、ぼくはまだまだだなぁ…」

「囚われ倶楽部は体育会系な所もあるから、いづれ未殊が樹を追い抜いたりして(笑)」

「ぴえん(泣)」

2020年07月31日