今を遡ること数ヶ月前のとある日、湊 未殊はピンチだった。
専門学校ボンドへ入学のため、都会から引っ越してきた未殊は近所の下見をしていた。
「近所の寺社仏閣はひと通りチェックできました。あとは夏になったら『くねくね』が出そうな田んぼでも探索しましょうかね。」
そして、ガラの悪い男性達に絡まれた。
「やめて下さい。お金は持ってませんよ。」
男達の目的はお金ではなく未殊自身であったので、男達は関係ないとばかりに未殊を取り囲み今にも襲い掛かりそうだった。
「おまえら、『悪』決定!」
その叫びと共に、男達と未殊の間に飛び込んできたのは小柄な少女(少年?)だった。
小鳥遊 樹である。
「いたいけな少女を取り囲んで、何のつもりだい?ぼくがその子の代わりに、ちょっと遊んであげようか?」
身長が150cmにも届かないその少女は、言い終わるのが先か3人の男達に攻撃を仕掛けた。
少女の速攻に男達が機先を削がれたこともあるが、小柄な少女はなにか武道の心得があるのか、見事な体裁きで相手の攻撃を避け、突きや華麗な蹴り技を繰り出していた。
しかし多勢に無勢で途中羽交い絞めにされたり突き飛ばされたりしたものの、少女は何とか男3人を追い払うことに成功した。
「いてて…、キミ、大丈夫だった?」
「あなたの方こそ大丈夫ですか?結構、殴られてたみたいでしたけど…」
「平気!ちっちゃい時からいとこのねぇちゃんと取っ組み合いばっかりやってて、道場でも殴られたり蹴られたりばっかだからさ!」
「女の子相手でも殴るなんて、なんて人たちでしょうね!申し遅れましたが、ありがとうございます。おかげさまで助かりました。」
「いやいや。その制服、ボンドの制服でしょ?ぼくも今年からボンドに入学するんだ!」
「まぁ、同級生でしたのね!これからも、よろしくお願いします。」
「こちらこそよろしく!ぼく、樹!小鳥遊 樹!」
「湊 未殊です。よろしくお願いします。」
そう言ってその日分かれた2人は、後日ボンドへ入学して再会することとなった。
「いっちゃん、そういえばそんなことがありましたね。」
「そうだった、そうだった!なんだか懐かしいなぁ。」
「最初はいっちゃんのこと、小柄な少年かと思いました。」
「私服だったしね!」
「あらためまして、あの時は本当にありがとうございました。」
「あらたまれると、照れるなぁ…」
「でもよく考えたら、複数の男性相手に勝てるなんて、いっちゃんは結構お強いと思うのですが…」
「あれは相手が全員シロートで、ローキックの受けすら出来なかったんだよ。だから何とかなっただけだよ。」
「いくら相手が素人でも、自分よりはるかに身長も体重もある男性が3人もいたんですよ?涼さんはいっちゃんを弱い弱い言ってますけど…」
「涼ねぇは生まれつきケンカの天才だからね。田舎では男の子相手にケンカばっかやってて、ケンカ10段を自称してたよ。」
「ケンカ10段…昭和の残り香がする通り名ですね。」
「ちなみにストリートファイターの連中は、涼ねぇのこと『狂猫』って呼んでたよ。チビですばしっこくて、猫みたいだって…」
「あんた、また余計なこと言ってるんでしょ!」
「ヒャッ!涼ねぇ!!」
「涼さん、いっちゃんはホントに弱いんですか?」
「う~ん、ボクから見ればトーシロに毛が生えた程度かな。分かりやすく例えて言うと、後ろ手に縛られた上にアソコにバイブ突っ込まれて感じまくってる状態のボクと戦って、いい勝負できるくらい?」
「分かりにくい上に、すごい下品な例えですね…」
「涼ねぇは色んな相手とケンカの経験があるから、格闘技の知識も結構あるんだよね。勉強の成績は底辺だったけど…」
「あんたも人のこと言えるほど、成績良くないでしょ!言われてみればケンカの相手が使った技は、だいたいマネできるかな?」
「涼さん、聖闘士(セイント)みたいですね。ちなみに睦部長も、いっちゃんより強そうですけど?」
「むつみ部長は古武道をやってるよ!しかも実戦的だから、一つ一つの技が本気でやったらケガじゃ済まないものばっか。」
「無空波とか蛇破山とかですか…?」
「ボクもむっちゃんとは、本気でケンカしたことないなぁ。」
「話は聞きましたぁ!そこで、分かりやすく皆さんの戦闘力を表にしてみました!」
木更津 睦
通称 :48の殺人技
力 :★★★★★★★★★☆(9)
技 :★★★★★★★★★★(10)
スピード :★★★★★★★★★☆(9)
経験 :★★★★★★★★☆☆(8)
精神力 :★★★★★★★★★★(10)
総合力 :(46)
朝宮 涼
通称 :狂猫
力 :★★★★★★★☆☆☆(7)
技 :★★★★★★★★★☆(9)
スピード :★★★★★★★★★★(10)
経験 :★★★★★★★★★★(10)
精神力 :★★★★★★★★★☆(9)
総合力 :(45)
小鳥遊 樹
通称 :仔猫のいっちゃん
力 :★★★★★☆☆☆☆☆(5)
技 :★★★★★★★☆☆☆(7)
スピード :★★★★★★★★☆☆(8)
経験 :★★★★☆☆☆☆☆☆(4)
精神力 :★★★★★☆☆☆☆☆(5)
総合力 :(29)
湊 未殊
通称 :ズブの素人
力 :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
技 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
スピード :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
経験 :☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆(0)
精神力 :★☆☆☆☆☆☆☆☆☆(1)
総合力 :(3)
「私の見立てでは、こんな感じです!」
「ま、数字で格闘能力出すとかナンセンスだけど、目安にはなるんじゃない?」
「素人の私を基準にすると、皆さんの強さがよく分かります。」
「う~、ぼくはまだまだだなぁ…」
「囚われ倶楽部は体育会系な所もあるから、いづれ未殊が樹を追い抜いたりして(笑)」
「ぴえん(泣)」
