4.お返し
帰り道。
「ねぇ、部長!今月の部費って余ってる?」
「涼さん、余った部費を何に使われる気ですか?そして、お金を無心するときだけ部長呼ばわりはやめて下さい!」
「リンスを買いたいんだ!」
「ずいぶん、私的な利用なんですね…。でもリンスって、今時100円ショップにもあるんじゃ?」
「シャンプーも疾の昔(とうのむかし)に切れてるんだけど、それは体を洗う固形石鹸で代用してる。でも、リンスしないと、髪がギシギシになっちゃうんだよぉ!縛られた時に縄がギシギシ鳴る音は好きだけど、髪がギシギシなのは嫌なんだ!」
「今時の若い娘がボディーソープではないというのも驚きですが、髪を固形石鹸で洗うって!?」
「うち、ビンボーなんだ。」
「でも、涼さん帰り道にいつも買い食いしてるじゃないですか!?」
「それがたたって、お金なくなっちゃったんだ!ボクのエンゲル係数は高いんだ!」
「そんな自業自得にみんなの部費を使うわけにはいきません!いとこの樹さんに借りるという手は?」
「樹には借金しまくってて、アイツも今やボクと同じくスカンピンさ!」
「さっきから涼さんの生活状況に驚きの連続です!樹ちゃんもお気の毒に…。分かりました、私が涼さんにリンスを買ってあげます!」
「ありがと~!むっちゃん!」
「その代わり…お返しはいつものですよ?」
「は…、はい…。ついでに今日の帰り道のお菓子も…いい?」
「いいですよ!お返しも2倍になりますけど、いいですね?」
「少し恥ずいけど…お菓子には代えられない、その条件飲もう!むっちゃんちは、お金持ちでいいなぁ!」
「私の家も、特別裕福というわけではないのですが…ねっ!」
睦の言うお返しとは、ボンドの実習とは別に行われる、睦による私的な拘束&快楽実験だった。
それを密かに撮影・販売したものが、睦や涼達が所属する拘束倶楽部の潤沢な資金源であることを、まだ涼は知らない。
ちなみに販売した利益は全額部費へあてており、睦が私的な利益にすることはない。
睦が手にするのは、拘束の実践技術と快楽であった。
睦:心の声「(これで古くなっていた麻縄を新調できる!奈〇あきらさんの縄にしちゃおっかな♪)」
「現金の貸し借りはしませんが、現物支給でしたら相談に乗りますよ!ついでに、今回はおまけでシャンプーも付けましょう!」
「ありがとう!むっちゃんは優しいなぁ!」」
睦:心の声「(そんなに無邪気に喜ばれると、少し良心が咎めますが…そうだ!ボタニカルでノンシリコンのシャンプーとリンスを買ってあげよう!)」
少し高めのシャンプーとリンスを買い与えることで、良心の呵責を薄める睦だった。
「でも、お返し2倍かぁ…そうだ!樹と2人でやれば2倍返済になるな!むっちゃん、それでいい?」
「いいですよ!樹ちゃんも一緒に可愛がってあげちゃいます!」
恐らく涼に貸した金は返済されない上に、知らないうちに睦への返済に協力が決まっている樹。
樹の境遇に涙を禁じ得ない。