2.ボクとぼく
学校帰り、涼と樹が学園の寮へと歩いている。
「樹、今日の夕飯何食べる?」
ソフトクリームを舐めながら涼が聞く。
「涼ねぇ、そんなに食べてばっかで、なんで太んないの?」
「さぁ、運動してるからかな?」
「でも涼ねぇ、高校生までやってた水泳部、この学校に入ってから辞めちゃったんじゃない?」
「う~ん、縛りから抜けようと毎日もがいてるからかなぁ?それとも実習中、いっぱいイッちゃうから!?」
「イクッて、涼ねぇ…(赤面)、この学校に入ってから、エッチくなったなぁ…」
「じゃ、あんたはなんでこの学校に入学したんですか?樹くん?」
「…だって、憧れの涼ねぇと一緒にベンキョーできるって思って、必死に親説得して県外のこの学校に来たんだよ!知ってるでしょ!」
「憧れ、ねぇ…」
不敵な笑みを浮かべつつ、アイスを食べ続ける涼。
涼は常日頃、幼いころから自分の後ろをまるで仔犬のように追いかけてくる純真無垢な樹のことを、妹と娘の中間のように愛しく感じていた。
また、天真爛漫な普段の樹からは想像できない、その隠された性癖も見抜いていた。
「もぅ…バカッ!」
立ち止まり、赤面した顔でうつむき悪態をつく樹。
しかし、意を決したように小走りで涼に追いつくと、涼が手に持っているアイスを横からかぶりついた。
「てんめぇ!樹!」
「やぁ~い!スキを見せた涼ねぇが悪いんだよ~だ!」
いとこ同士で住まいも近所だった涼と樹は、幼いころから二人とも活発で、姉妹というよりも兄弟のように過ごしていた。
水泳部で小麦色に日焼けした涼と、小さいころ涼に泣かされてばかりで強くなろうと空手を始めた樹。
体育会系の二人は、揃ってショートヘアーで、見た目は少年のようだった。
いつも外で元気よく一緒に遊んでいた二人は、兄弟と間違われることも多かった。
そのせいも関係するのか生来の気質かは定かではないが、涼はいつしか自分のことを「ボク」と言いだし、それをかっこいいと感じた樹も真似をして自分のことを「ぼく」と言うようになった。